Down’s Innovations Vol.33 Whole Earth Connections #1

2月13日(日)【Down’s Innovations Vol.33 Whole Earth Connections】をオンラインにて開催しました

米・ニューヨーク在住のKIYOKOさんとZOOMで繋ぎ、お話を伺いました。

まずは、

・NY在住までの経緯
・現在の生活環境 〜主に娘の学校生活について
・アメリカの一般的な公立学校事情
・Special Education Class(SpEd);日本の特別支援級
・Integrated Co-Teaching class;インクルージョン
・NDSS主催NYCバディウォーク

バディウォーク東京に参加経験のあるKIYOKOさんはセントラルパークで開催されたNYCバディウォークが、あまりにのんびりしていて驚いたそうです。

その後、コロナ禍の状況(学校の様子やワクチン接種、昨年末のNYCの様子)を伺い、参加者も日本との違いに興味津々でした。


今回、特に知りたいと思ったのは『アメリカのダウン症ある人のAdvocate(当事者の主張)について』です。

アクセプションのメンバーと、アメリカのニュースでは、例えばNIPTを扱う場合、当事者へのインタビューをする場面が多くあり、かつ視聴者の心を捉えるようなコメントをしているのに、なぜ日本は当事者のインタビューは少ないのだろうか、といった話し合いをしていました。

また、私がアクセプション設立当時、ダウン症のお子様を持つ方から『日本ではカレンガフニーさんみたいな人が出てこないんだよね』と言われたことがずっと頭の片隅に残っていました。

まず最初にKIYOKOさんが紹介してくれたのは二人でした。

・俳優、アスリートとしても活躍するFrank Stephensさん



ニューヨーク出身で国会議事堂でロビイストとして活躍するKayla McKeonさん


彼らはどのような経緯でAdvocate(当事者の主張)する側になったのでしょうか。
まず、前提としてアメリカは人種や民族性、宗教、家庭環境、性自認等が多種多様な人々で成り立っている国であり、日本人同士が一般常識と思うようなことが、アメリカ人同士では一般常識とならないし、KYが普通!言わなくても相手にわかって(察して)もらえるは通用しない!ということでした。

日本では自己主張することは否定的に捉えられがちですが、アメリカではむしろ主張しなければ認められない(歴史的に認められてこなかった)社会であり、自己主張することは肯定的に捉えられのだというのは、日本とは大きく違いますよね。

結果、障がいの有無に関わらず、自分の意見をきちんと言えるようになるための教育が小さいうちから学校で行われているというのは単純に凄いなぁと思いました。ある意味、アメリカで生きていくスキルを身につけるためには小さい頃から学習しないといけないということなのでしょうね。その点、日本は空気を読んでくれるので、余計な自己主張がなくとも安易と生きられますが(最近は生きづらい人も増えた?)、どちらも一長一短ですね。

さて、そんな自己主張するためのスキルを身につけるべくアメリカの教育では、以下のようなことをやっているそうです。

[1] Show & Share(Tell)


(写真はイメージ)


未就学児童から同じクラスメイトの前でプレゼンの練習を行い、先生は否定的なことを言わず、自分の意見をいうことは良いこと、楽しいことと思わせる。

[2] Fact vs Opinion


客観的な事実?個人的な意見/感想?を分ける訓練です。
例えば、Apples are fruit(林檎は果物)は事実、Apples are delicious(林檎は美味しい)は個人的な意見というようにFactか、Opinionかに分ける訓練を行います。SNSから情報を得る上でも大変重要な観点ですよね。

[3] Opinion Writing



OpinionとFactの違いを理解した上で、自分の意見や感想を読み手にわかりやすく書く手法を学ぶ。
これは私にとっては会社のプレゼンスキルで学ぶことなので、小学校低学年で学ぶとは、それは成長してからプレゼンスキルに違いが出るよなぁ、と思いました。

だからこそ、ダウン症(以外も)の当事者は小さい頃から自己主張のスキルを磨き、人によっては国会議事堂でロビイストとして活躍したいという方も出てくるのでしょうね。
 


その他、アメリカでは近年Diversity,Inclusionに加えてEquityが重要視されており、多くの学校や企業でDEI(Diversity, Equity & Inclusion)がポリシーとして掲げられていることや、自分や相手の感情を理解することによって、社会の中で適切に行動できるための知識やスキルを得るための学習Social Emotional Learning(社会性と感情の教育)が全米の多くの学校で導入されているそうです。

さまざまな人々の考えが衝突したり分断したりするアメリカ社会を反映して、自分の考え方を整理したり、内省したり、他者と共存するための理解につながるような手がかりを見つける、というスキルのアップデートが必要なのでしょうね。
 


最後にKIYOKOさんから現在のアメリカでは様々な問題を少しでも減らすため、多様なバックグラウンドや文化を持つ他者に対して共感するEmpathy(エンパシー)の教育が重視されているというお話がありました。

なるほど、SNSの共感(いいね)製造措置による押し売りではなく、相手を慮(おもんばか)る共感力を敢えて教育で身に付けなくてはいけなくない時代に入ったのだなと、良い取り組みと思いつつ、社会がそれだけ分断してきて困っているからなのだよな、と複雑な気持ちになりました。

空気を読まなくてもよかった日本も、現在はインターネットで情報が氾濫する社会になったいま、障害のある人も無い人も自分を表現したり守ったりするために、こういったスキルや考え方のアップデートをしていかなくてはいけないなと思いました。
 


様々な気づきが得られた貴重な2時間でした。
KIYOKOさんがアメリカに渡り、お子様を通じて体験・実感したことを知ることができました。

KIYOKOさん、有難うございました!    

予告動画