「インクルーシブまるごと実現プロジェクト」バリアフリー映画上映会 開催レポート
主催:DPI日本会議 協力:NPO法人アクセプションズ
アクセプションズの古市です。
2021年7月18日、東京・文京シビックセンタースカイホールで開催された「みんなで楽しもう!映画上映文化祭2021」に参加してきました。バリアフリー映画とは字幕・音声解説がついた映画で視覚障害者や聴覚障害者、盲ろう者といった情報保障を必要とする方も楽しめる映画です。
今回はじっと座っているのが難しい人や独り言が出てしまう人、動作音が出る呼吸器ユーザや暗く閉鎖的な空間が苦手な人、他者からの視線が気になる人など既存の映画館では鑑賞が難しい人にも配慮された会場作りが画期的でした。
映画館は黙って長時間座れる人、耳が聞こえる人、目が見える人だけが楽しむものではないということを知ってもらい、誰もが一緒に楽しめる新しい映画鑑賞のあり方を追求する試みです。
当日は26階からの眺望がすばらしい会場にほぼ定員いっぱいの40名あまりが参加。
会場の一角に飾られた絵画はどれもすばらしく、3人の作家の個性あふれる作品に衝撃を受けました。
映画1本目はスタジオジブリの『耳をすませば』で字幕と音声ガイド(オープン形式)付きでした。セリフだけではなく情景や動きの説明が入り最初はちょっと音声の多さが気になるものの、だんだんと活動弁士が付いた無声映画を楽しむような感覚になっていきました.
お昼休みの後はトークセッションが行われました
NPOバリアフリー映画研究会理事長の大河内直之さんからは、バリアフリー映画普及活動を始めた経緯や現状と課題、早稲田大学文化構想学部の岡部耕典さんからは映画『道草』を作ったきっかけや想い、そして古市からはインクルーシブな社会を目指す活動をする中で感じたことやゲストお二人への質問など、DPI日本会議の崔さんの進行で30分という短い時間でしたがぎゅっと要点が詰まったセッションとなりました。
映画2本目は『道草』です。
この映画は「重度」といわれる自閉症と知的障害のある人が介護者付きで一人暮らしをする日常を追ったドキュメンタリー映画です。字幕と音声ガイドがつき、音声はFMラジオによるクローズ方式。貸し出し用の機器をつかってイヤホンで聴きました。
自閉症と重度の知的障害がある人は親元か入所施設が多いのですが、2014年に重度訪問介護制度の対象が拡大され、ヘルパー(介護者)付きで一人暮らしが可能になりました。主人公たちは地域のなかで移動支援、生活介護、居宅介護などの福祉サービスを利用しながら自立生活をしています。ヘルパーさんとの掛け合いがまるでコントを見ているようでおかしくもあり、時には感情がコントロールできず衝突する場面もありますが、そこには入所施設とは全く違う“自由”がありました。
入所施設では、何を食べるか、いつ寝るか、休日にどこに行くか、何を買うか、そんな当たり前の生活を自分の意志で選ぶことが難しい日常があります。手がかかると言われる重度知的障がい者を“何もできない人”にしてしまっているのはいったい誰だろう、管理の対象にしてしまっている社会の在り方が人々の偏見を生んでしまっているのではないだろうかと親としてさまざまな思いがあふれてきました。
参加者からは以下の感想が寄せられました。
- コロナ中、集まることも少なくなり、久々に集まれて本当によかったです。
- リラックスして、映画を見ることができました。
- リクエストとしては、小さな子どもが楽しめる映画があればいいなあと思いました。ちょっと、内容が大人な感じだったので。道草は保護者として、勉強になりました。
- また、参加したいです。ありがとうございました!
今回のバリアフリー上映会は、情報保障のあり方と誰もが映画を楽しめる会場作り、そして重度知的障害者の地域での暮らしを考える上映会となりました。
アクセプションズとして企画から集客、当日の運営に協力させていただき、また当日はダウン症のある高校生2人が受付や準備を手伝ってくれて大いに助かりました。
参加してくださった皆様、関係者の皆様、ありがとうございました。