• 根本的治療は出来ない
  • ・人を形成している細胞は、もとはたった1個の受精卵が細胞分裂により、成人で約60兆個という膨大な数となっています。ダウン症のある人はその身体を作っている全ての細胞で21番染色体が1本多いのです。従い根本的な治療方法は、60兆個の細胞について60兆個の21番染色体の過剰な1本だけをそれぞれから取り除くと言うことです。赤ちゃんの時でも3兆個もの数となり、現在の技術をもってしてもこのような根本的治療は不可能です。

  • 遺伝子の解明
  • ・2006年にヒトゲノムの解読が完了し、21番目の染色体のDNA配列も解明されました。しかしまだ配列が分かっただけで、それぞれの部位の配列で形成されている遺伝子がどのような機能をしているのかについての解析が全てできているわけではありません。しかしダウン症の症状の原因は、21番染色体に存在する遺伝子の変異によるものではなく、21番染色体に存在する遺伝子が普通の人と比べて2本ではなく3本(1.5倍の量)となるためです。つまりは遺伝子そのものは異常ではなく、数が多いという問題なのです。また最近の研究では21番染色体の全ての部分がダウン症の特有な症状に結びついているわけではなく、一部の領域のみが影響していると言うこともわかってきています。

  • 遺伝子治療について
  • ・現在の遺伝子治療は遺伝子に異常があり異常なタンパクを作り出したり、タンパクが作られなくなったりした時に、どこでも良いので正常な遺伝子を一箇所に導入することによって疾病の症状を無くしてしまう方法です。ダウン症の場合は前述の通り遺伝子そのものが正常であり、遺伝子の数が多いためそれにより作られるタンパク質の量が問題になっており、現在の遺伝子医療が適用できる疾病ではありません。従い原因となるタンパク質を特定しその量をコントロールする方法が現実的です。

  • ダウン症の治療の可能性
  • ・実際にどの遺伝子が例えば神経系の発達や早期老化などに関与しているのかがあきらかにされていけば、合成されるタンパクが特定でき、そのタンパク質を特異的にブロックする薬剤も研究されていくだろうと思われます。これは、非常に現実的なことです。ですから、21番染色体上の遺伝子が解析され、その働きが明らかになってくることで、将来の結果としてダウン症のある人の生活の質がよくなったり寿命がのびたりもあるかもしれません。

    現時点でも世界中の研究機関で、染色体が違うマウスでダウン症に似た状態を作り(ヒトの21番染色体と似た性質の、マウスの16番染色体を過剰にする)、そのうえで様々な薬物を投与しするなどの臨床実験が行われて効果が出ているものもあります。

    しかしながら、こういった薬剤は一般的には中枢を刺激するものとなり、ヒトに対してどのような副作用があるかも含め特に慎重に取り扱う必要があるため、実用的に使用できるにはまだまだ時間がかかるものと思われます。